【編集後記】エンタメに壊された獣道。“獣道”はなぁ。ウメハラ主催のイベントなんだよ!——4月の振り返り

ドミニカ共和国の格闘ゲーマーMenaRD(めなあーるでぃ・通称メナ)。誰もが認める最強プレーヤーでもある彼のラブコールからはじまった今回の“獣道”。

多くの格闘ゲーマーを魅了したウメハラとの10先が、2026年4月29日(水)に実現した。この対戦カードに、多くのファンが注目し、そして待ち望んでいたことだろう。試合の日が近づくにつれて、なんかソワソワしちゃう。まるで自分事のように泣きそうになってしまう——。

そして決戦の日、両者の思いがぶつかり合い、ついにウメハラが敗れる——ドラマチックな展開、ウメハラへのリスペクトを忘れないメナ。天を仰ぐウメハラ……。歴史が大きく動いた瞬間だ。なんてきれいな原稿は書けない。

「えっ、クソじゃね?」

多くのファンが感じた違和感。冷たさと熱狂が入り交じる異様な空気。心底、今回の“獣道”にガッカリした人も多いんじゃないかな。

結論からいえば、今回の“獣道”が“獣道”ではなかった理由は、「Evo LEGENDS LIVE」というイベントの中のひとつにすぎなかったからだ。“獣道”はウメハラが主催する10先(10本先取)イベント。因縁のあるプレーヤー同士がプライドのみを懸けて戦うガチンコバトル。そこに、賞金やファイトマネーなどない。再戦すら許されない——これこそが「格闘ゲームの真骨頂だ!」という胸熱な試合が見られる貴重なイベントなのだ。

特に有名なのは、ときどが涙した“獣道・弐”ではないだろうか。絶好調だったときどを完膚なきまでに、しかもノーガード戦法というプレースタイルで、ある意味「ウメハラが分からせた」試合。ときどの男泣きが、試合の重さを感じさせてくれる内容だった。

もっとコアファンであれば、“獣道”の前身ともいえる「正しいのはオレだ! オゴウvsクラハシvsウメハラ 地獄の10先格付けマッチ」を思い出すだろう。

“獣道”って、言葉を選ばなければ殺し合い。バッチバチの真剣勝負が見られる数少ないイベントなのよ。それが、今回の「Evo LEGENDS LIVE」内の“獣道”といった、エンタメ10先イベントで肩透かしを食らってしまったという感じ。なぜなのか——。

そもそもウメハラ主催じゃない

大前提として、今回の“獣道”はウメハラ主催じゃない。今までの“獣道”はウメハラが「自分が、みんなが、本当に観たいものを観る」、「観たいものを自分で作って観る」イベントなのよ。だから、ウメハラがマイクを持って、ウメハラ主導で動いてこそ“獣道”なんだと。

しかし、蓋を開けてみると、会場ではまったく別のスタイルでまったく別の演出でイベントが進行していた。誤解を招かないように言っておくけど「MCのライアンが悪いんじゃない」、「イベントそのものが悪いんじゃない」。ただ、これは“獣道”じゃないよ。

控えめに言って運営がダメすぎた

昼前に買い物や用事を済ませ「よし見るぞ!」と意気込んでいた人もいただろう。しかし開始時間、画面に映っているのは何もないステージ。ザワザワする謎の時間。何のアナウンスもなく、ほぼ同じ画が1時間以上続いた。「えっ、何これ」

長時間待たされたのにも関わらず、なんの説明もないまま突然始まるオープニング。見る側もどこでスイッチを切り替えればいいのか分からない。モヤモヤした熱量のまま、なんか英語でしゃべっている口上を聞くだけの時間が流れる。

気になったのはこれだけじゃない。緊張感が薄れる演出だ。

  • 意味なく長時間待たされる
  • 日本の会場なのに、雰囲気作りだけの英語のパフォーマンス
  • 試合前にはプライドバトルそっちのけの和気あいあいな感じのインタビュー
  • 音量がちぐはぐでUIも破綻するgdgd進行
  • 「ウメハラ選手に勝ってもらいたい人拍手〜」という観客に押しつけた無意味なアンケート
  • 敗者であるウメハラが、なぜかメナにサイン入りのユニホームをその場で渡すという謎演出(しかも黒いペンで書いたからかサインが見えない)
  • それをとてもきれいにたたむメナ(かわいい……メナだけが分かってる)
  • 余韻もなく終わるエンディング

試合内容は超良かった。ウメハラのアイデンティティーともいえる、オゴウから学んだ飛び道具を主軸とした戦い。あまりにもウメハラらしさが出ていた戦いだと思った。対するメナは、今の『スト6』のシステムを極限まで極めたような精度での応酬。この場面だけ切り取れば、最高の試合だった。正直、今のウメハラでは勝てないと思っていたけど、それでも6勝まで食らいついたのはさすがだ。『スト6』をまったく知らない夫ですら、「やべぇ、面白い」って画面に食いついてた。それくらいふたりの対戦には惹き付けるものがあった。

でもさ、やっぱりアールさんやハメコ。さんがステージにいなきゃダメだろ。ウメハラが負けてしまった歴史的な瞬間に引導を渡すのはライアンじゃないだろ。スパーをやった仲間たちがなんでステージに上がれないんだよ。なんで遠く離れた位置で解説させてるんだよ……。

アールさんやハメコ。さんが、なんかソワソワして実況していたのは、何か思うところがあったんじゃないかなと邪推してしまう。

選手に対するリスペクトがなさ過ぎたチャット欄

今回の「Evo LEGENDS LIVE」には、ウメハラ vs MenaRDのほかに、『餓狼伝説 City of the Wolves』によるLaggia選手 vs GO1選手の試合、『鉄拳8』によるArslan Ash選手 vs チクリン選手の試合も行われた。どちらも、両タイトルのまさにレジェンド級のプレーヤーによる戦いだ。しかし、本大会で多くの視聴者が楽しみにしているのは、ウメハラ vs MenaRD。どんなにレジェンド級な試合が展開されようが、前座感が出てしまうのは致し方ない。タイトルが若干マイナーだということ、さらに試合開始が1時間以上遅れたこともあって、視聴者もピリピリしている。「早く終われ」的なコメントが散見されたのは非常に残念だ。

しかし、チャット欄が荒れてしまったのは、複数タイトルのレジェンドマッチを一緒くたにしてしまったイベントプログラムにも原因がある。そもそもイベント名が「Evo LEGENDS LIVE – DAIGO vs MENARD」の時点で、上記2タイトルのレジェンドたちはオマケだと思われても仕方がない。格闘ゲームはタイトルごとにシステムが異なるので、『スト6』を知ってるからって、『餓狼伝説 City of the Wolves』や『鉄拳8』の試合を見て理解できるとは限らない。

そういったシステムの異なる競技シーンの魅力をいかに視聴者に飽きさせずに見せるのが運営の腕の見せどころなのであって、視聴者がヤジを飛ばすのは致し方ないと思っている。巨人戦のチケット買ったのに、4〜5時間も知らない競技の大会見せられても「?」ってなるでしょ。

今までの“獣道”でも『怒首領蜂 大往生』といったシューティングゲームや『ぷよぷよテトリス』といったパズルゲームがタイトルに選ばれることがあった。それでも楽しめたのは、やはり魅せ方の妙だったのではないだろうか。

彼らは彼らでもっと別の形で扱ってあげたかったなぁと。

エンタメ化による会場の違い

個人的には、試合会場はやっぱりゲーセン(ニュートン)であってほしかった。今まで運営に携わっていた松田さんも、時代の変化に少しだけ寂しさを感じているようにも思えた。

昔のゲームの大会ってこんなサブカル要素があったんだよね。eスポーツのシーンが盛り上がって、どんどん規模が大きくなって大衆受けするためには、ステージも豪華にしなければならないという理屈は分かる。ただ、“獣道”は“獣道”のままであってほしかったというのが私の意見。

まあでも、ここまで語っておいていうのもなんだけど、「老害乙」って言われても仕方ないのは理解してる。時代は変わってるんだ。eスポーツを興行として事業とし昇華させていくには、あのままではダメなのは分かっている。

ただ寂しいよね。残したい文化はあるんだよ。格ゲーのサブカルでアングラな部分って、妙に居心地がいいんだよ。

もしかしたら、ウメハラは心の中でこう言っているかもしれない「こういうのじゃないんだよな」ってね。

まあ、それでもこれだけのイベントを無料で配信してくれた運営陣の方々には感謝しています。好きだからこその厳しい意見であって、老害発言にはなってしまったと思っているので、次なるイベントはぜひアツい演出をお願いします。