【編集後記】元チーターの“沖縄に行くために”が白判定なのに許せない派がいる理由

いま『VALORANT』界隈では、元チート使用者(元チーター)のストリーマーに非難の声が相次いでいる。それはeスポーツチームNOEZ FOXXに所属している沖縄に行くために氏だ。ここでは便宜上、沖縄氏と表記する。

これまでの経緯をざっくりまとめるとこんな感じ。

  • 沖縄氏が生配信でチート利用の疑いでBAN(凍結)される
  • 本人はチート使用を否定
  • NOEZ FOXXが『VALORANT』を開発・運営しているRiot Gamesと調査を開始
  • NOEZ FOXX オーナーであるDJふぉい氏がRiot Gamesからの回答を生配信で報告
  • 沖縄氏は99%黒で永久BANであるとRiot Gamesから告げられたとのこと
  • 本人は完全否定
  • 沖縄氏のアカウントが不正アクセスされたことが確認されBANが解除される

一度ハッキングツールの使用が確認されたからアカウントBANしたけど、それは何者かに不正アクセスされたことが原因なのが調査でわかったからBAN解除するね。ってこと

ひとまず今回のアカウントBAN騒動は一件落着となったわけだけど、界隈はまったく一件落着していない。むしろ「おかえり歓迎派」と「二度と戻ってくるな派」がより顕在化してしまった。

なぜなのか。

元チーターのレッテルは消えない

沖縄氏は、かつてOkinawapexという名前で活動していた『VALORANT』のプロ選手。2020年には、eスポーツチームAbyssのVALORANT部門に所属するも、過去のチート利用疑惑が取り沙汰され、結成わずか1日で解散された過去を持つ。

のちに沖縄氏は別のタイトルでチートを使用していたことを認めたものの、2023年にeスポーツチームNOEZ FOXXへストリーマーとして加入することとなったのだ。

この元チーターというのが肝で、今回のアカウントBANが不正アクセスによって解除されたからって、元チーターであることには変わらないということ。

せっかく何者かが不正アクセスしたことによるアカウントBANだったという結論がでていても、元チーターという過去の過ちが尾を引き、「今回の件は沖縄氏がチートを使っていないことの証明にはならない」という結論になってしまうのだ。

沖縄氏は許されないのか否か

元チーターに対する見方は人それぞれで、「過去は過去。今がんばっているんだから応援しよう」という派と、「二度と表舞台に戻ってくるな派」に分かれる。

個人的な意見は「よそで活躍してようが関係ないけど、私と同じ界隈で目立ってほしくはない」という意見。というか沖縄氏を否定している人の少なからずは、こういった感情で反対しているんじゃないかと思っている。

例えば「インドのカバディで超インチキしていた選手が、満を持して競技シーンに復活!」とかいうニュースがあったとしても、多くの日本人は「ふーん」って感情しかわかないと思う。そこで「いやいや、それはNGだろ」とわざわざ声を大にしない。

今回の件も、同じ界隈で真剣に活動している人からの批判が多いのはそういうことだ。たかが一度チートしただけじゃんって思う人もいるかもしれないけど、ゲーマーにとって元チーターは犯罪同然という見方をする人だっている。一筋縄では消えないレッテルなのだ。eスポーツチームRIDDLE ORDERのオーナーボドカ氏も、強い口調で今回の件を批判しているのもそういった理由があるんじゃないかな。

元プロゲーマーのKUNや、VTuberの渋谷ハルも元チーターのレッテルが、いかに払拭(ふっしょく)されないものなのかに言及している。

しかもオンラインという相手が見えない環境ならなおさらで、そんな元チーターと対戦した際、なんだか納得のいかない負け方をした場合「あれ、やってんのか……」っていう気持ちが頭にわいちゃうわけで。こういった潜在意識って、そう簡単には消えないんだよね。

仕事でもあるじゃん。約束の時間を守らない人との待ち合わせで、約束の時間の2〜3分くらいになると「あー、また遅刻か」って思いはじめるあの感覚。

これからの立ち回りが超重要

チートはスポーツに例えるならば、薬物など競技力を高める違法な行為をして勝利を得ようとするドーピングのようなもの。オリンピックでもたびたびニューするになるドーピング問題。場合によっては、スポーツ界から永久追放されるほど重い違反になっている。今の若い子は知らないかもしれないけど、陸上選手のベン・ジョンソンとかね(笑)。

またチートで得られた知識っていうのは、チートしていない人は絶対に得られない知識であって、そんな環境で一度でもプレーしていたというのは不公平という意見もある。

現在話題となっている沖縄氏は、過去に別のタイトルでチートを使っていることは本人も認めている。つまりNOEZ FOXXに加入したことは、ある意味セカンドチャンスだったに違いない。

そんな彼が現在疑惑の渦中にあることは、当人にとってはもちろん、所属チーム、eスポーツ業界にとって大きなマイナスイメージをもたらしている。

なにより、どのタイトルよりもチート対策が優秀とされている『VALORANT』というタイトルで活躍するプロ選手がチートを使用していたとなると、『VALORANT』の競技シーンにも疑いの目がかけられてしまう。

『VALORANT』は、過去にも北米で開催された女性部門の公式大会「VCT 2023: Game Changers North America Series III」において、アマチュアチームnoot nootのメンバーから不正が検出され、当該チームが失格するという事件が起こっている。

▲疑惑のシーン

こういった不正が競技シーンにまでおよんでしまうことは、真面目に活動しているeスポーツチームに大きな損失を与えかねない。

仮に今回の件が潔白だったとしても、元チーターを認めている沖縄氏の疑いが晴れるのは難しい。そんな彼が所属しているNOEZ FOXXに対してもだ。彼が再びストリーマーとして活躍していくのであれば、そういった否定派も納得できる環境で腕前を遺憾なく発揮してもらいたい。

今こそ、超アナログゲーム配信が最新ゲーム配信として再熱するんじゃないかと。つまり、ウェブカメラでゲーム画面を投影して配信すること。これなら、ゲーム画面直撮りだし手元も顔も見えるだろうし、もう時代の最先端すぎるでしょ!

▲団長は時代を先取りしすぎていた!?

どちらにせよ、eスポーツ界隈におけるチート問題は、せっかくオリンピックeスポーツ大会開催が決定したeスポーツの明るい未来に水を差す行為だ。いわゆるビデオゲームにおいて、チートを根絶することは不可能に近い。であれば、せめてプロの競技シーンだけでも、業界全体が協力してチート対策を徹底するといった対策が必要なのではないだろうか。

でもね。チーターって自分が大事にしているコミュニティーをぶっ壊す超破壊力のあるものなんだよね。許す許さないは別として、ゲームにとってチーターという存在は、めちゃめちゃ脅威な存在で重みがあるものだっていう認識が広まってほしい。

私は『リネージュ』で中国人業者のチートプレーヤーによってコミュニティーが破壊された経験がある。気づけば日本人プレーヤーvsチート業者との戦いがゲーム内で生まれるほど大きな問題になった。

なんなら、彼らにゲーム内でコンタクトを取って「なぜチートをしてまで日本サーバーでプレーしているのか」というのも聞いたことがある過去があるだけに、今回の問題は不安要素ではあるんだよね。