【編集後記】BlackWizが報われない——このままだとVALORANTの国内リーグは甲子園になってしまう

いま、『VALORANT』の国内リーグが混沌としている。VALORANT部門を持っているeスポーツチームが、軒並みチームを解散させようとしているのだ。現状だと、VARRELとREJECTの選手が全員LFT(所属チームを探している)を表明している。

簡単にいってしまえば、チームを存続する価値がないからのひと言に尽きる。

BlackWiz選手の配信が話題に

そんなVARREL VALORANT部門に所属しているBlackWizもLFTを表明している選手のひとり。そんな、彼が配信で国内プロ選手の胸の内を語っていた。

「配信している時間がない」という言葉は、ある意味生々しい発言だ。eスポーツ選手っていうと、大会で好成績を収めるために日々練習を重ねている傍ら、ファン獲得のため、自身の知名度のためにも自らがストリーマーのような配信することを課せられている。

ファンからすれば推しのチームや選手と近い距離でコミニケーションが取れるからうれしいかもしれないけど、選手からするとプライベートや練習する時間を割いて配信をしていることになる。まあ、地獄だよね。

『VALORANT』の競技シーンは、国内リーグで上位の成績を収めると、国際リーグに進出できる権利がもらえるということで、いわば下位リーグ的な扱いになっている。

そんな国際リーグの出場を半永久的に保証されているのが、『VALORANT』の開発元であるRiot Gamesに認められたZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeの2チームのみ。あとの国内チームは、その座を勝ち取るために国内の下位リーグで血眼になって戦っているのが現状。

んで、さらにいうと、国際リーグで戦っているZETA DIVISIONとDetonatioN FocusMeの2チームですら、海外チームに歯が立たない状態で、選手の入れ替えが激しいのが現状。

つまり世界的に見ると日本のレベルは低い位置にあることになり、そんな国内リーグで戦う選手たちが一番にやることって配信なんかじゃなくて、競技シーン全体のレベルアップなんじゃないかと私は思っていた。

そんなことを彼に投げかけたロングインタビューもぜひみてほしい。

単純に、現状VALORANT部門の選手って地獄っぽいよね。多分、がっつり練習できる時間がないんじゃないかな。しかもメンバー5人+コーチらが集まってじっくり練習できる時間なんてほとんど取れていない気がする。

そういった中、選手は毎シーズンごとにLFTを表明して、また来シーズンは選手をシャッフルして各チームが挑戦する。これだと小手先の攻略しか生まれないような気がするけどどうなんでしょ。

国内リーグはアマチュアチーム活躍の場になりかねない

冒頭で、「チームを存続する価値がない」と雑に表現してしまったけど、これは決して選手たちにその価値がないわけではなく、国内における『VALORANT』の競技シーンが起因している。

先のBlackWizの配信でも話しているが、国内リーグは年に2〜3シーズンに分かれているんだけど、その各シーズンで優勝しても賞金200万円程度しかもらえない。

やばいよね。

ひとり頭いくらだよってことになるし、優勝できなければチーム側も潤わない。優勝できなかったら、そのお金すら手に入らないんだから、チームとしては配信とかファングッズとかよそでお金が取れないと大赤字。『VALORANT』は特にメンバーが多い競技で、選手5人に控えが1〜2人、コーチやアナリストも2〜3人いるとなると、少なく見積もっても10人くらいは必要。

もともとめちゃめちゃ人気があるチームや選手ならどうにかなるかもしれないけど、まだまだ知名度も少ない選手で構成されたメンバーだと厳しそうなイメージ。

しかも第一線で活躍していた選手が集まってるVARRELですらこの状況なんだから、現状安定してそうなのってFENNELとかMURASH GAMINGくらいになりそうだよね。

そうなると、プロチームが国内リーグのために選手を抱えることなんて無駄だと感じて、国内リーグは甲子園みたいな、学生やアマチュアチームだけが活躍する場になってしまうんじゃないかと。

その中で「この選手すごいっ!」って選手が、国際大会に出場しているチームからオファーが来て、飛び級で国際大会に出場するみたいな。

『VALORANT』オフライン大会はチケットが完売になるほど、日本では大人気なコンテンツなのに、そういった売上って選手やチームには還元されていないのかなぁ。今月も国内リーグの2シーズン目にあたるプレーオフが有明GYM-EXで開催されるけど、チケットの売上は順調そう。一昔前じゃ考えられなかった光景が、オフライン大会で見られるんだよね。

▲これが国内のeスポーツ大会って本当に今でも「本当なの?」って思うくらいすごい迫力だった。さいたまスーパーアリーナで開催された「VCT 2022 プレーオフ」

「うおーー、VALORANTの人気やべーー!」

みたいに感じてる傍ら、国内で活躍するチームは火の車だと思うと、この現状どうにかならないのかな。

ていうか、BlackWizくんはほんと真面目でいい子なんだから、もっと報われてほしいって個人的に思ってしまう。最初にインタビューしたのって、NORTHEPTION時代の2022年で、この頃ってまだNORTHEPTIONってダークホース的な位置づけで、宣材写真とかもなかったんだよね。

そんな中、プレーオフ進出を果たしたNORTHEPTIONの選手にインタビューができるってことで、彼に話を聞いたんだけど、最初は素顔も見えないから「BlackWizって名前からして絶対厨二病こじらせた選手か、いかつい選手かの二択だろこれ……」とか想像しながら恐る恐るインタビューに挑んだのを今でも覚えてる。

そしたら、めっちゃ物腰が柔らかくて質問に対しての答えもしっかりしてる。当時、あそこまでインタビューをしっかり受け答えできる選手って少なかったから衝撃だったんだよね。

それからNORTHEPTIONはめきめき成長していって、彼らから話を聞く機会も増えた。いつも礼儀正しいし、オフラインでインタビューした時は「ありがとうございました」って手を差し伸べてくれたり、国際大会週常時にビデオ通話でインタビューした時も、「ありがとうございました」って手を振ってくれたり——。いやはや「こんな好青年が報われないeスポーツ悲しいっ!」って、eスポーツおばさんも感じちゃうわけですよ。

7月の大会が終わると、8月から新たに追加された3シーズン目の大会がもうはじまる。2シーズン目のメインステージ上位8チームのプロチームが今現状どうなっているかっていうと、

1位→RIDDLE ORDER(7月のオフライン大会進出)
2位→Sengoku Gaming(7月のオフライン大会進出)
3位→SCARZ(オフライン進出を逃し、選手らはこの先どうなるかわからないとXでポスト)
4位→VARREL(事実上の解散)
5位→FENNEL(7月のオフライン大会進出)
6位→MURASH GAMING(プレーオフ進出を果たすもオフライン進出ならず)
7位→REJECT(事実上の解散)
8位→NORTHEPTION(オフライン進出を逃し、選手らはこの先どうなるかわからないとXでポスト)

ざっくり言えば、オフライン進出が確定していないチームの中で「来シーズンもこのチームでがんばります!」って名言している選手は皆無ってことだから、もう答えはでているようなもの。

来シーズン大丈夫なのかー。