まだまだ春も始まったばかりなのに暑い日が続く今日この頃。体調管理も心配だけど、同じように心配なのが高性能なゲーミングPC。特に人気タイトル『モンスターハンターワイルズ』のような高画質なゲームを長時間プレーしていると、パソコン内部の温度も爆上がり——。熱暴走でパフォーマンスが低下してしまうことも。
そんなPCの暑さ対策としておすすめしたいのが水冷式CPUクーラー(簡易水冷)だ。文字通り、水を使って冷却するシステムなので、一般的な空冷式CPUクーラーに比べて冷却性能が高く、また静音性も期待できるのがポイントだ。
「すでに空冷ファンがついてるし、付け替えるのは敷居が高そう……」とか「簡易水冷にチャレンジしてみたいけど、よく分からない」とか、あと一歩が前に出ない人も多いのではないだろうか。
そこで、今回は簡易水冷初心者はもちろん、冷却システムを見直したい上級者にもおすすめしたいCorsair(コルセア)の水冷式CPUクーラー「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」を紹介。本製品のメリットや空冷式CPUクーラーからの換装方法を解説していこう。
- とにかく取り付けが簡単
- 冷却性能が高い
- ファンやラジエーターが光る
- 温度表示などの拡張キットがある
- ケースサイズに合わせたラインアップ
- 価格は高め
- 温度表示などは拡張キットが別途必要
- 拡張キット使用時はPC電源との接続が必要
買ってすぐに取り付けられる安心のパッケージ
まずは「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の中身を確認しておこう。

初めて水冷式CPUクーラーに挑戦しようとする際に、敷居を上げているのが付属パーツの多さだ。ネジの種類が多かったり、取り付けるための別パーツが多かったり————。しかし本製品は非常にシンプルなパーツで構成されているので、初心者も安心して取り付けができる。

「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の魅力は、なんといっても本体が組み立てられた状態でパッケージされている点だ。同じ水冷式CPUクーラーでも、ラジエーターとファンが別々に梱包されていて「まずはこれらを取り付けてから〜」といった行程が必要な場合もある。初心者だと、ファンをどちらの向きにつければいいのかとか、ファンから飛び出しているケーブルをどう処理しようかなど、いきなり悩むポイントにぶち当たるのだが、本製品であれば、そういった悩みは杞憂だ。
水冷式CPUクーラーを選ぶポイントとして外せないのが、配線がデイジーチェーンに対応しているということ。デイジーチェーンに対応していないと、ファンひとつひとつを配線しなければならないため、それだけで配線の敷居は上がる。場合によってはマザーボード側のファンコネクタが足りないこともあり、別途増設しなければならないのだ。

ファン同士を連結させて一番後ろのファンだけをマザーボード側に接続するだけでOKといった接続ができるのがデイジーチェーンの魅力。なお、ファンのサイドに取り付けられているプレートは取り外し可能。

既存の空冷クーラーを取り外そう
今回は、水冷式CPUクーラー取り付け初心者向けの記事となっているので、まずは既存の空冷式CPUクーラーの取り外しから解説していこう。新しくPCを組み立てるならば本項目は飛ばしてOKだ。

PCのケースはメーカーによって形状はさまざまだが、基本的にはリア側(電源などが配線されている裏側)でネジ止めされていることが多い。マザーボードにアクセスできるようサイドパネルを外したら、PCを倒して真上からアクセスできるようにしておこう。

空冷式CPUクーラーもメーカーによって形状はさまざまだが、基本的には4カ所で固定されているネジを緩めれば取り外せる。特殊な形状の空冷ファンを使っている場合は、取扱説明書を見ながらだと外しやすい。
CPUクーラーの取り外しの注意点
CPUクーラーは、グリスと呼ばれる潤滑剤でCPUと接着されている。ノリのような質感なので、高温時はなめらかに、低温時はカチカチに固まるのが特徴だ。冬場など寒い環境ではCPUとCPUクーラーがガッチガチに固定されていることもあり、無理に取り外そうとすると、CPUごとガバッととれてしまうことも……。通称「スッポン」と呼ばれるこの現象はCPUを壊してしまう原因なので十分気をつけたい。

こういったスッポンを防ぐ簡単な方法が、一度PCを起動するというもの。起動してゲームなどPCに負荷をかければCPUの温度は上がり、結果グリスの温度も上がって取り外しがしやすくなる寸法だ。ゲームに熱中しすぎて換装する時間がなくなってしまわないよう、適度に遊んで作業を再開しよう。
また空冷式CPUクーラーはファンケーブルでマザーボードと接続されている。念のためどこに接続されているのかを確認してから取り外しにかかろう。



CPUに付着しているグリスはエタノールで除去しておこう。おすすめは無水エタノール+キムワイプのコンボ。驚くほどきれいに、そして簡単に除去できる。

「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の取り付け
既存の空冷式CPUクーラーを外したら、いよいよ「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の取り付けだ。水冷式CPUクーラーの取り付け順序はひとそれぞれだが、最終的にちゃんとつながっていればいいのだ。今回は配線の確認、マウントの取り付け、ラジエーターの取り付け、ポンプユニットの取り付け、ケーブルの取り付けの5つの項目に分けて解説していこう。
配線の確認
取り付ける前に配線の確認をしておきたい。「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」におけるケーブルの接続は「iCUE リンクシステムハブ」によって制御される。要は電源のマルチタップのような役割をしている。

この「iCUE リンクシステムハブ」はPC内部の裏側に取り付けておき、そこから枝分かれするように各パーツに配線をしていくといった仕組みだ。今回は付属のケーブルのうち5本のケーブルを使う。1本だけ不要になるので保管しておこう。


便宜上ケーブルをA〜Eに割り当てた図が下記の通り。今回は確認のために「iCUE リンクシステムハブ」に一度ケーブルを取り付けたが、まずは各ケーブルを本体やマザーボードなどに接続してから、「iCUE リンクシステムハブ」に取り付けた方がケーブルの取り回しがしやすいのでおすすめ。

各配線にあらかじめケーブルを取り付けておく。ラジエーターやポンプユニットなど、PCケースに取り付けてからでも配線することもできるが、クリアランスが悪くなったり、コネクター部分が見えなくなったりする可能性もあるので、あらかじめケーブルを取り付けておくといいだろう。




このケーブルDが初心者にとっては鬼門となる。一般的なUSBコネクタとは異なる上、見慣れないマザーボードから該当するピンを見つけなければならない。基本的にUSBのピンはマザーボードの下部に配置されていることが多く、上記の写真のようにUSBと書かれている親切なものもある。
パッと見ピンが10本あるように見えるが、実際は右下のピンのない9ピンとなっている。向きを間違えるとピンを曲げてしまうことになるので、コネクター側の形状も確認しながら差し込もう。なお、マザーボードにUSBのピンが複数ある場合、どこに取り付けても問題ない。
ケーブルCはPCの電源と直接接続するので後回しでOKだ。
CPUに合わせてマウントを取り付ける
「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の本体部分となるポンプユニットをCPUに取り付ける際、CPUによってプレートを付け替える必要がある。今回はAMD Ryzen 7 7800X3DのCPUに取り付けるため、「AMD AM5/AM4 マウントブラケット」に交換する。




なお取り外したプレートと付属のバックプレート(黒いプレート)は、それぞれIntel CPU用となっている。今回は使用しないので保管しておこう。
PCケースにラジエーターを取り付ける
ここまでの準備が整ったら、いよいよ各パーツの取り付けだ。まずはラジエーターから取り付けていこう。ラジエーターの取り付け場所はPCケースの形状によって異なる。今回はケースのトップ(上部)のスペースを活用する。



今回はPCのトップに取り付けたが、フロント(前面)に取り付けることもできる。また、ケース内にファンが取り付けてあって、ラジエーターを設置する場所が確保できない場合は、「既存の空冷クーラーを取り外そう」と同じ要領でファンを取り外そう。
ポンプユニットの取り回しについて
ラジエーターを取り付ける際に気になるのが、ポンプユニットの置き場だ。ラジエーターとポンプユニットは取り外しができないため、ラジエーターを取り付ける際はポンプユニットが宙ぶらりんになってしまう。特に、適当に置いておくとグリスがあらぬところに付着してしまう恐れもあるので、しっかりと置き場を確保しておきたい。

またポンプユニットから先に取り付けてしまうのも手。ある程度ケーブルの逃げ道がイメージできる人はポンプユニットから取り付けた方が楽な場合もあるが、完成時のイメージがわかない初心者の人はラジエーターから取り付けた方が安心だ。
CPUにポンプユニットを取り付ける
続けてCPUにポンプユニットを取り付ける。プレート部分のネジとマザーボード側のネジ穴(空冷式CPUクーラーが取り付けてあったネジ穴)に合わせて取り付けていく。

ちなみにポンプのロゴ部分はマグネットで付いているだけなので、自由に方向が変えられる。取り付けの段階で向きは気にしなくてOKだ。


取り付ける際の注意点はとして4カ所のネジは均等に締めていくということ。一カ所だけ一気に閉めてしまうと高さのバランスがずれてしまい、残った3カ所のネジが締めづらくなってしまう。一カ所ずつ少しずつネジを締めていき高さを均等に保ちながら作業するといいだろう。
各種ケーブルを「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」に取り付ける
各パーツに取り付けたA〜Eのケーブルを「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」へと取り付ければ完成だ。ここからは、PCの裏側での作業になるので、配線などにアクセスできる背面のサイドパネルを外して作業に取りかかろう。


6ピンのケーブルは上記のように8ピンと分断できるタイプもある。ピンごとに正方形だったり山型だったりと形状がことなるので向きに気をつけながら装着しよう。

配線を行う際の注意点は、余計なケーブルは極力ふれないこと。思わぬ衝撃でどこかにつながっていたどこかのケーブルが抜けてしまい、PCが起動しなくなってしまったなんてこともありうる。初心者にとって原因の特定するのは至難の業なので、配線は慎重に行いたい。ケーブルA〜Eのみをゆっくり取り出し、慎重に配線していこう。
また一度配線が完成したら、サイドパネルなどを戻す前に一度電源を入れてみよう。この時点で起動しなくなった場合、何か配線にエラーが生じている可能性が高い。誤ってケーブルが抜けてしまっていないかを確認し、しっかりとPCが起動したのを確認してからPCケースを元に戻そう。

拡張キットでさらなる機能を解放
「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」は拡張キットを取り付けることで、新たな機能を解放することできる。現在発売されている拡張キットは「iCUE LINK AIO LCD Screen Module」。こちらをポンプユニット部分に取り付けることで、CPUの温度を表示させたり、お好みの画像を表示させたりできる。より凝った見た目を楽しみたい人におすすめだ。

取り付け自体は簡単だが、再びPC内部にアクセスすることになる。あらかじめこちらの拡張キットを取り付ける前提であれば、「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の取り付けと一緒に行うのがベター。

本体となるLEDスクリーンモジュールを取り付ける際、「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」のポンプキャップを取り外す必要がある。こちらは手作業となり、強引にはずそうとすると固定しているピンが折れてしまう可能性もあるので慎重に行いたい。


取り外し方は、まず上記の突起部分とは反対側の側面を押し込みながら上に引き上げて、反対側のツメを外そう。

上部のツメが外れたのを確認したら、先ほど説明したポンプキャップの突起部分を取り外す。こちらは両手で作業した方が安全だ。無理に角度をつけて引っこ抜こうとするとピンが折れてしまうので注意。



取り付けが完了したら再び起動を確認してみよう。うまく起動しない場合は、配線が抜けてないか要チェック!

iCUEのインストール
「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の取り付けが完成したら、本製品の機能を最大限に発揮できる「iCUE」をPCにインストールしよう。


「iCUE」に対応したCorsair製のPCパーツがあれば一括して管理することができるので、これからPCを組み立ててみたいという人は、マウスやキーボードなど、「iCUE」に対応したデバイスでそろえるといいだろう。

詳しい使い方は割愛するが、個別にライティングする方法でつまづいたので、念のため紹介しておこう。それぞれのファンとポンプユニットなどの光り方を個別に切り分けたい時は、キャンバスのカラーをオフにする必要がある。



また「iCUE LINK AIO LCD Screen Module」は表示の内容を回転させたり、お好みのアニメーションGIFを再生させたりできる。より柔軟なカスタマイズができるようになるので、自分だけのオリジナルスクリーンを作ってみるのもアリ!



「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」の水冷効果は抜群!
最後に「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」のパフォーマンスをまとめたので紹介してこう。今回試した実験は、空冷式CPUクーラーと、本製品を含む水冷式CPUクーラー2製品を同じスペックのPCに取り付け、ベンチマークを起動。その間、CPUの温度がどのように変化したのかをチェックしてみた。結果は下記の通り。

最高負荷時に空冷式CPUクーラー「AK400」が最高温度80°を超えている中、水冷式CPUクーラー「CPS DS360-BK」や「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB」は70°以下をキープ。春先での調査なので室内の気温は低い状態での調査ということもあり、大きな変化は見られないが、夏先になるとこの差はさらに開くと思われる。
まとめ
今回は120mmのファンが3基搭載されたモデルをレビューしたが、120mmファン×2基モデルの「CORSAIR iCUE LINK TITAN 240 RX RGB」や140mmファン×2基モデルの「CORSAIR iCUE LINK TITAN 280 RX RGB」など、PCケースのサイズに応じたモデル展開をしている。また、拡張キットの「iCUE LINK AIO LCD Screen Module」が標準搭載されている「iCUE LINK TITAN 360 RX RGB LCD」というモデルもある。価格差が+2,000円程度なので、あとから拡張キットを購入するよりお得だ。それぞれブラックとホワイトのカラーバリエーションがあるので、自分のPCに合わせたモデルを選んでほしい。
![]() 240 RX RGB | ![]() 280 RX RGB | ![]() 360 RX RGB | ![]() 240 RX RGB LCD | ![]() 360 RX RGB LCD | |
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ファンの数 | 120mm×2 | 140mm×2 | 120mm×3 | 120mm×2 | 120mm×3 |
LCD | なし | なし | なし | あり | あり |
Amazon リンク | Amazon | Amazon | Amazon | Amazon | Amazon |
個人的には今回レビューした「CORSAIR iCUE LINK TITAN XXX RX RGB」シリーズがおすすめ。CPU温度など情報が表示できる「iCUE LINK TITAN XXX RX RGB LCD」シリーズも魅力だが、やはり配線が増えるというのと、ぶっちゃけそんなに情報を見ることはない。また、表示できる情報のテンプレートも、わりにシンプルなものが多く、デザインに好みが分かれるものが多い。
「CORSAIR iCUE LINK TITAN XXX RX RGB」シリーズならば、拡張キットを追加購入で「iCUE LINK TITAN XXX RX RGB LCD」と同等にアップデートできるのも強みだ。
