【Elgato XLR Dock MK.2 レビュー】Wave FXで驚くほど低遅延!——初代とモニタリング遅延比較で明らかに

キャプチャーデバイスなど、配信環境を整えるデバイスを開発・販売しているElgato(えるがと)が、今年既存のオーディオデバイスを刷新。Wave Nextとして次世代音声プラットフォームを展開。新たに「Wave FX」という音声処理エンジンを導入し、各デバイスを刷新した。

コンデンサーマイク「Wave:3」、オーディオインターフェイス「Wave XLR」、さらにStream Deck+へ増設できるXLR入力モジュール「XLR Dock」に、次世代モデルを示す「MK.2(まーくつー)」の名称が追加された。

▲「Wave:3 MK.2」という風に名称が変更。見た目はほぼ変わらないが、機能が追加されたりライティングが進化したりとマイナーではありながら大きな変化を遂げている

「なんだちょっと進化しただけじゃん」思うかもしれない。たしかに体験できるのはわずかなんだけど、そのわずかの中にかなり便利要素が詰め込まれている。ひとつずつ解説するのは後回しにして、どんなことが変わったのかをザックリ並べてみよう。

・エフェクトを追加した状態でも、違和感の少ない低遅延モニタリングが可能
・ノイズ除去やEQなどの音声エフェクトがほぼ遅延なしで利用可能
・加工済みの音声をDiscordや配信ソフトへそのまま出力しやすくなった
・自動ゲイン調整で、ちょうどいい音が簡単に作れるように
・大声を出した際の音割れ耐性が向上
・Stream Deck+との統合による直感的な操作性

今まで、ちょっと不便だなぁと思っていたことがまるっと解決されたのが、次世代モデル「MK.2」に搭載された音声処理エンジン「Wave FX」ってこと。

今回は、その中でも「Stream Deck+」へ装着して使用するXLR入力モジュール「XLR Dock MK.2」をレビュー。初代モデルと比べてどれほど進化したのか、追加された「Wave FX」やDSP処理(PCではなく本体側で音声エフェクトを処理する機能)の実力、そして実際の使い勝手を含めて検証していく。

▲「Stream Deck+」の土台部分からXLRマイクが接続できるようになる「XLR Dock MK.2」。「Stream Deck+」のダイヤルで音声も制御できるので一体感が半端ない

初代から別物レベルに進化? ——「XLR Dock MK.2」の低遅延モニタリングを検証

ということで、いろいろすっ飛ばして初代との違いを検証していく。実際の使用方法や取付方法などは記事後半に記載してあるので、気になる人はそちらからチェックしてほしい。ここからは、初代「XLR Dock」を初代、「XLR Dock MK.2」をMK.2と略して解説していこう。

そもそも、なぜ初代で遅延が発生するのかというと、それはエフェクトを入れる箱に原因がある。その箱というのはElgatoのオーディオソフトウェア「Wave Link 3」だ。初代における音声出力の動線は下記の通り。

▲DiscordやOBSなど、マイクや音声出力の設定で「XLR Dock」を選択すれば、遅延のない生の音が出力される
▲一方で、ノイズカットやイコライザー、ボイスチェンジャーなど、さまざまなVSTエフェクトをかけた状態で音声を出力したい場合は、「Wave Link 3」で設定した仮想のミックスを選ぶ必要がある。ミックスに入れることで遅延が発生し、さらに追加したエフェクトに応じて遅延が増える仕組みだ
▲「Wave Link 3」で適当なミックスを作成し、そこに「Elgato XLR Dock」を追加することで、さまざまなエフェクトをかけた状態のマイクの音声を、指定したアプリで流すことができる

初代の欠点は、「Wave Link 3」のミックスに入れた時点で遅延が80ms程度発生するという点。さらに追加したエフェクトの種類によって遅延が増えるので、音を作り込めば作り込むほど遅延が重たくなる。

これは、自分の声をモニタリングする際も同じで、生音であれば遅延はないが、エフェクトを追加した際は遅延が発生する。モニタリングする際は、常に自分の声が少し遅れて聞こえた状態で話し続ける必要があり、かなり違和感がある。

一方で、MK.2はそのエフェクトを入れる箱となる部分が本体に集約されている。わざわざ「Wave Link 3」でミックスを作成することなく、エフェクトを追加した音声を外部アプリに出力できるようになったので、ミックスに入れる際の遅延が丸々カットされるといった仕組みだ。

▲MK.2では、マイクの音声がまずハードウェア内のWave FXで処理され、さらに「Wave Link 3」で追加したVSTエフェクトが専用の低遅延パスを通じて本体に戻される。この処理済み音声がデバイスの出力そのものになるため、DiscordやOBSではミックスではなく「Elgato XLR Dock MK.2」をデバイスとして選ぶだけでエフェクト適用済みの音声を配信できる

MK.2では「Wave Link 3」で追加したVSTの処理をいったん本体に戻して出力することで、劇的に遅延が改善されるのだ。これは、自分の声をモニタリングする際も同様で、MK.2ではわざわざミックスに追加しなくても、エフェクトを適用させた自分の声をモニタリングすることができるため、非常に低遅延なのだ。

そこで、今回は初代とMK.2でどれだけ遅延に差があるのか検証してみた。実際にマイクの近くで音を鳴らし、それがモニタリングとしてヘッドホンから聞こえるまでの差を比較。

▲本体の3.5mmジャックにヘッドホンを接続し、外部のボイスレコーダーの近くに装着。その状態で本体のXLRジャックに接続したマイクの近くで、AirPods Proのケースを閉じる「パチン」という音を鳴らす。音声編集ソフト「Audacity」で波形を確認し、生音とヘッドセットから聞こえるモニタリング音の発生タイミングの差をチェックした
XRL Dock モニタリング遅延検証 遅延
モニタリング(生音) 0ms
ミックス(ソフトウェアエフェクトなし) 約82ms
ミックス(Voice Focus) 約104ms
ミックス(Pitch) 約203ms
ミックス(Voice Focus+Pitch) 約231ms
XRL Dock MK.2 モニタリング遅延検証 遅延
ダイレクトモニタリング(生音) 0ms
モニタリング(Voice Focus) 約59ms
モニタリング(Pitch) 約138ms
モニタリング(Voice Focus+Pitch) 約190ms
ミックス(ソフトウェアエフェクトなし) 約73ms
パターン別比較 初代 MK.2 差分
モニタリング(生音/ダイレクト) 0ms 0ms ±0ms
エフェクトなし基準値 82ms 0ms -82ms
Voice Focus 104ms 59ms -45ms
Pitch 203ms 138ms -65ms
Voice Focus+Pitch 231ms 190ms -41ms

検証結果は上記の通り。今回の比較では初代とMK.2で約41〜65ms(0.041〜0.065秒)の差が出た。差は小さく見えても、モニタリング用途では十分体感しうるレベルで、エフェクトの種類によってはさらに開く可能性もある。数値だけ見ると「なんだ誤差じゃん」と思うかもしれないが、自分の声をモニタリングする用途ではこの数十msが案外大きい。話しながら返しを聞く場合、違和感の出やすさにしっかり影響するレベルだ。

ちなみに「Pitch」は負荷があるエフェクトのため、MK.2でもモニタリング時の遅延は体感できてしまったが、そのほかのエフェクトはほとんど遅延を感じることなくモニタリングできた。これは便利だ。

充実したハードウェアエフェクトの追加で低遅延で美しくクリアな音声を実現

「XLR Dock MK.2」のもうひとつの魅力は、本体に内蔵されたハードウェアエフェクト。初代にも内蔵されていた「Clipguard」、「Lowcut」はもちろん、さらに音声をクリアにする4つのエフェクトが追加された。これらハードウェアエフェクトは、先述したVSTエフェクトとは異なり、ほぼ遅延なしで適応できるのも大きい。「処理が重たくなったらどうしよう……」という不安なく音声を調整できるのだ。

■ハードウェアエフェクト一覧
Clipguard:急に大きな声を出したときの音割れを防ぐ保護機能。初代にも搭載されていたが、MK.2ではさらに強化されており、大声や不意の音量変化にもより余裕を持って対応できる。

Lowcut:低域の不要な振動音や空調ノイズ、机の振動由来の濁りを抑えるフィルター。初代からハードウェアで搭載されており、80Hz / 120Hz の2段階から選べた。一方でMK.2は 80Hz 固定となっている

Expander:声を止めた瞬間の環境ノイズを自然に下げる機能。Voice Focusほど万能ではないが、軽いノイズカット用途ならハードウェア版Voice Focus的に使えるポテンシャルを持つ。しかもMK.2では遅延を増やさず使えるため、モニタリング用途との相性はかなりいい。

▲Expanderの設定画面。中央のグラフにある青い横線は「しきい値」で、このラインより小さい音を抑えていく仕組みだ。ドラッグして任意の高さに調整できる。左の青いメーターは入力レベル、右の青いメーターは処理後の出力レベルを示し、右側のゲインリダクションメーターでは、どれだけ音量を絞っているかも確認可能。詳細設定では、比率、アタック、リリースを調整できる。比率を上げるほど小さな環境音は強めに抑えられ、アタックを短くするとノイズへの反応は速くなる一方で、声の頭まで削りやすくなる。逆にリリースを長くすると、話し終えたあとも抑えがゆっくり戻るため、ノイズの出入りが自然になる

Voice Tune:声に温かみや厚みを加え、より整った配信向きの質感に寄せる処理。スライダー1本で効きを調整でき、軽くかければ自然、強めならよりとがった音声になる。

▲Voice Tuneの設定画面。効果量はスライダー1本で調整でき、左の「弱」では自然寄り、右の「強」に近づくほど声に温かみや厚みが加わっていく。マイクそのものの音を大きく変えすぎず、手早く聞き心地を整えたい時に便利だ。一方で、数値で調整できず、またデフォルト値に戻すボタンもないので、基準に戻せないのは難点

Compressor:小さい声を持ち上げつつ、大きすぎる声を抑えて音量差を均す機能。ささやき声と張った声の差が縮まり、聞き取りやすさが安定する。つまり音声を平均化してくれるイメージ。

▲Compressorの設定画面。Expanderと同じく青い横線でしきい値を調整できるが、役割は逆で、こちらはしきい値を超えた大きな声を抑えて音量差を整えるためのエフェクトだ。左の青いメーターは入力、右の青いメーターは処理後の出力を示し、オレンジのゲインリダクションメーターでは、どれだけ大きな音を抑えているかが分かる。中央のMakeup Gainは、圧縮で下がった全体の音量を持ち上げるための補正だ。詳細設定では、比率を上げるほど大きな声を強く抑えるようになり、アタックを短くすると大声への反応が速くなる。リリースを長くすると抑えがゆっくり戻るため、音量変化がより自然に聞こえやすい

Equalizer:声の帯域バランスを整える機能。こもりを減らしたり、明瞭感を足したり、逆に刺さりを抑えたりできる。初期状態のマイク音を、「そのまま使う」から「一段整えて使う」という味付けに。

▲Equalizerの設定画面。色の付いた丸いポイントをドラッグ&ドロップして音を作っていくのだが、この色玉はかなり自由に動かせるため、「どこをどういじればどんな音になるのか」が最初はかなり予想しづらい。帯域の説明は表示されるものの、結局はモニタリングしながら少しずつ詰めていくことになりやすく、かなり沼りやすいタイプのエフェクトだ

とりあえずClipguard、Lowcut、Expander、Voice Tuneはデフォルト値で十分音質の変化を体感できるのでオン推奨。CompressorやEqualizerは、さらに自分好みの音作りをしたい人向けだ。

これだけのハードウェアエフェクトが、違和感の少ない低遅延で楽しめるのはかなりのポテンシャルといえる。特に配信や録音といった世界観を作り込みたい人におすすめしたい。

かゆいところに手が届く「Wave Link」上のUIもバージョンアップ!

MK.2では「Wave Link」での操作性も向上している。特にモニタリングまわりは分かりやすく、初代のようにミックス経由を前提にしなくても、エフェクトをかけた自分の声をそのまま聞けるのが大きい。生音を聞きたい場合は、「ダイレクトモニタリング」をオンにするだけでいい。

▲PC/マイクミックスの右側にある「⋮」をクリックすると、リニアマイクミックスに切り替えられる。リニアマイクミックスは、PC側の音量バランスを変えずに、自分の声だけを自然に重ねてモニタリングしたい時に便利なモードだ

なお、「高出力モード」をオンにすると、単純に全体の音量が底上げされるイメージだ。もう少し大きめの音で聞きたい時や、音量に余裕を持たせたい時に便利だ。

さらに、入力ゲインの項目にある「自動ゲイン調整」をクリックすると、ゲイン調整ウィザードがスタートし、指示に従うだけで自分の声に合わせたゲインに調整してくれる。自分の声が大きすぎないか小さすぎないか不安な場合は、こちらで調節しておくといいだろう。

▲10秒間マイクに向かって話し続けるだけで適切なゲインに調整してくれる。これが地味に便利!

内容物と取り付け方

最後に内容物と「Stream Deck+」への取り付け方を紹介しよう。内容物は非常にシンプルで本体と解説書のみ。「Stream Deck+」のアタッチメントという立ち位置なので、余計なアクセサリーは付属していない。

▲初代は段ボール調の地味なデザインだった外箱は、Elgatoカラーともいえるブルーを基調とした鮮やかなパッケージに刷新された
▲裏面はXLRコネクタ、3.5mmジャック、USB Type-Cコネクタとなっている
▲ちなみに初代とMK.2を並べると見た目はまったく同じ。背面に書かれた型番表記を見ない限り見分けは付かない

取り付け方法はシンプルで、「Stream Deck+」本体裏側の2カ所のネジを外して土台を取り外すだけ。あとは、その土台の代わりに「XLR Dock MK.2」を装着すればOKだ。

▲土台が取り付けてあるネジは再利用するのでなくさないようにしよう。ネジ穴を合わせれば、カチッとハマる仕組みになっている

まとめ

ということで、今回はWave Nextとして刷新された、「XLR Dock MK.2」のレビューをしてきた。旧製品にあたる初代「XLR Dock」との併売はされていないので、単純に「Stream Deck+」にXLRマイク接続機能を増設したいというのであれば、「XLR Dock MK.2」は買いだ。特に、「Wave XLR MK.2」よりも場所を取らずに同等の機能が得られるというのは大きい。

▲「Stream Deck+」のプラグインを使えば、ダイヤルでミックスごとの音量を制御できたり、マイクの調整なども行えるため、操作性が抜群にアップする

では、初代を持っている人で「XLR Dock MK.2」に買い換えるポテンシャルを秘めているかというのは、完全に使い方に左右される。特にVSTエフェクトを使っておらず、現状の音質で満足しているのであれば買い換える理由はほぼない。一方で、配信などVSTエフェクトで音を作り込んでいたり、現状の音質に不満を抱いているのであれば、買い換えは大いにアリだ。特に、ハードウェアエフェクトは、ほぼ遅延なしで音質を高められるのは大きいし、さらにVSTエフェクトを使用した際の遅延も軽減できるのはうれしいポイントだ。

個人的に良かったと思う点は、「Wave Link」でミックスの仮想マイク出力を使わなくても、エフェクトを追加したマイク出力ができるという点だ。これにより遅延が軽減されるだけでなく、OBSやDiscord側でも迷うことなく設定しやすい。

こういった煩わしさから解放されるのも、「XLR Dock MK.2」のメリットなので、気になる人はぜひ購入を検討してみてほしい。

XLR Dock MK.2
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Stream Deck +
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Wave DX
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Elgato XLR Cable
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